「日本の美術-その形と心」水尾比呂志

日本の美術―その形と心 (1982年) (岩波ジュニア新書)

日本の美術―その形と心 (1982年) (岩波ジュニア新書)

 

 

土器を見ているとどんなに素朴な形のものであってもなにか生命力のようなものを感じる、とか、庭には必ず石があって、むしろ石がなければなにも始まらないとか(日本以外の庭作りってだいたい地形に手を入れる形なんだけど、日本だけ土地から整形するらしいんですよね、他の国にもないのかなぁ)、言われて見るとあー、確かに、と感じるもののどうも日本人以外に通じるのかどうか微妙に怪しいな、とも思うんですが。
そもそもこの一覧が土器、埴輪、寺院、仏像、神殿、やまと絵、かな文字、甲冑と刀、石庭、水墨画、能面、茶器、城、障壁画、琳派、浮世絵、民芸、といった感じでいわゆる美術品というもののほうが少ないんですよね。
芸能とか宗教関係物とか、実用品とか建築物もろもろとか、そっちが多い。
これって生活の一部や芸能などの中に「美」となるべきものがあって、必ずしも独立していない、しかもそれが時代時代で対象ごと変遷して来たということなのではないのかなぁ、とこれを読みながら考えていたんですが。
時代ごとの有名どころに触れてるだけなんだけど、見事に一つのテーマとしてまとまってるとも言えるんだよね。微妙に「芸術」というものが独立していないというか。
絵ですらそれを取り上げると生活のどの部分にあるべきか決まってる。

まあもちろん、庭園の美や建築の美なんてものはもともと日本に限らずそう生活の一部でもあって、残っていれば社会背景を辿るツテにはなるとは思うんですけども。
能面や茶器、甲冑や刀、水墨画や浮世絵なんてのは定期的に誰かがその意味と当時の立ち位置を伝えていかないとなかなか残らないんだろうなぁ、と思わないでもなく。そういう意味ではむしろ土器とか埴輪とかのほうがわかりやすいとも言えるのかしら。