「星亨-藩閥政治を揺がした男」鈴木武史

この本の中でも出てきた東京市街鉄道(都電のルーツの一つの私鉄です)や、彼の子飼いだったという小田急電鉄の創設者である利光鶴松の存在などからふと興味を引かれて手に取ってみたんですが、う、うーん、もともと鉄道史から財界に、そこから思想史と金融をちょっとずつ齧ってる身としてはどうもいまいち「藩閥政治」が実感出来ないというかw
(すごく純粋に確かに一部機関の地位は占めてるけど、人数が極端に少ない。)
ただ、なんだろう、むしろ私が政治の世界を認識してなかった理由の一つがその果てしのない泥仕合のせいだったと思うんですが、薩長土肥のいずれでもなく、どちらかというと幼い頃に父親を失い、母親が再婚した医者も豊かとは言えず、という身分で財界ならばともかく政界に殴り込めた存在は他にいなかったんだよ、と言われてしまうと、どうなんだろう、彼自体がなにかしたというわけでなくても、その世界に存在感を示したということそのものが重要だったのかなぁ、という気もしないでもないんですよね。
ただ、そのせいなのかちょっと位置がよくわからないというか、自由民権運動にしても、政党政治にしてもこの人にとってはあくまで権力掌握のための道具だったみたいなところがあって、伊藤博文氏にしてもそんな感じなのよね。多分。

金権政治家の走りと言われ、尊大な態度、恫喝めいたやり口で周囲と上手く行かなくとも、なんだろう、それで蓄財するようなこともなく、妻を大事にして、特に民衆の味方というわけでもなかったんだけども、うんまあ、そこまで酷いことしたってわけでもなかったしなぁ。そこまで金権政治も露骨でもなかったよね。
ただやっぱり、この人は財界とのつながりから語って欲しい気はします、政治としてはやっぱり大抵のやろうとした政党政治も途切れちゃったし。夢途中ってところかな。