「地名と地理の謎がわかる! 東京の歴史地図帳」谷川彰英・監修

一番面白かったのが墨引きという町奉行の統括地域を示した地図の範囲、それに寺社奉行の地域を足した朱引き。だいたいこの朱引きが明治以降は市内という認識をされていたんですが、江戸幕府が「御内府」って言ってたのはどっちだろうね、と言われたら微妙。
あと地名関係がぽつぽつと、池袋の説とか「たかたの馬場」とか北品川とか。
江戸五色不動ってのは存在は時々触れられているんですが、不動明王五行思想に沿って市内地に展開したんだよ、というのはお見事、今までで一番納得したかも。
玉川上水や神田上水に関しても、あちこちに細切れになっていたんですが、もともと神田川だったのを伸ばして上水として引き入れたんだよね、という説明が上手い。神田というのが奉納のための田んぼだよー、というのも面白かったんですがもうちょっと平将門と結び付いた話が聞きたかったかも、江戸の有数な祭りだよねあれ。
霞ヶ関が奥羽街道の関所で近代になってからもなかなか開発がしにくくて、というのは初めて聞きましたが、地質が悪いってのは水捌けが悪いって意味じゃないかな。もともと日比谷も海辺って言われてたし、あの辺にそういう土地があるのは納得。

ただ、内藤新宿の成り立ちに関してが間違ってたり、飯盛り女は数が規制されていたからその数を越えている部分が摘発されていたんだよ、というのが説明出来てなかったり、ソメイヨシノも江戸時代に開発されたって説は最近は否定されてるんだよね、というのがちょっと気になったり、まああれですね、参考文献の範囲の違いかな(3次資料多めw)。
吉原に関してもなんか妙に曖昧だったなぁ、というか、把握してる内容の説明は上手いんだけどわからないところだと触れずに誤魔化してしまうっぽいね。内容もぽんぽんと飛んでいてあまり統一性もないですが、まあ読んだだけの価値もあったな。