「「出雲」からたどる古代日本の謎」滝音能之

「出雲」からたどる古代日本の謎 (プレイブックスインテリジェンス)

「出雲」からたどる古代日本の謎 (プレイブックスインテリジェンス)

 

 とりあえずそもそもかつて「出雲は神話はあるものの、実際は特になんの権威もなかった」と言われていた時代から把握したほうが案外わかりやすくなるのではないかと思うのですが、それが青銅器がまとめて見付かるわ(しかも銅鐸と銅剣は一緒には出土しない、と言われていたのが出荷前みたいな形でまとめてどちゃっと出てきた)。
出雲大社はあまりにも伝えられているサイズが大きかったためにデマだろうと思われていたものの、基礎部分の遺構が見付かり、ひょっとしたら実在したのではないか、ということになっていたりと、なかなかの進展を見せまして、どうもその後その大幅な学説の変化を迫られたための現時点までの資料&史料の洗い直しがこの本、ということになるんじゃないのかな、出土したものには触れるもののあくまでメインは文献寄り。
そもそも出土品がほとんどなかった、ということで今まで『日本書記』や『古事記』のみを日本神話として扱っていたことの反省を含め、各地の『風土記』からも記述を拾っていくスタイルですね。
どういう立場の著者さんかわかりませんが、素人向けとしては悪いバランスではなかったんじゃないかのかな。ただ、とても結論まで至らないこの本がそもそも素人が読んで面白かったかというとちょっと疑問かもw

個人的には最近読んでいた【遺跡を学ぶ】でほとんどなかった発掘関係以外の情報が、こういう一連の流れの中で捉えられているというのは収穫だったかな。まあ、青銅器はやっぱりさすがに出雲周辺で作って運んでいたというくらいは推測してもいいよね。
ただやっぱりこれだけだとなんとも消化不良なので、もうちょっとこの人の本も読んでみよう、真面目なのはいいんですが、まあ簡単には進みそうもないなぁw