「倭人と鉄の考古学」シリーズ日本史のなかの考古学、村上恭通

このシリーズちょっと検索してみたんですが、3冊目までが出たところで10年以上経ってるんだな、どうなったんだろう一体…(いやまあいいんですが、著者名もタイトルもしっかりと決まってるようなのでちょっと意外ではあったかも)。
とはいえ、個人的にはどうにも評価しにくい、というより、鉄の歴史の本で鉄でもなく遺跡でもなく文献から入るというのはだいぶ相性が良くなかったんじゃないのかなぁ、というのが正直なところ。いやだって、産業って歴史書にはほとんど載ってないしなぁ。
(断片的な資料にはたまにあるので、そこを研究した本は何冊か読んでます、というか、それ以外で文書資料を扱ってる人がいるとも思ってなかった、いや効率が…。)
それとこの本に限らないんですが、鉄の本で鋳物師が載ってないってのがどうにも気になるんだよなぁ、この本では完全に「鍛冶」にまとめられてしまっていたんですが、大宝律令の頃だと大蔵省に「典鋳(いもの)」って別にあるんだよね。
研究が存在しているとは触れられていたものの、1999年刊行の本よりずっと古い研究なんてのも読んでいるのでどうしてもなぁ、詳細わからないながら引っ掛かる。

ただ、面白かったのが鉄の板が一時的に貨幣のような絶対価値のものとして通用していたこと、それがあくまで短い期間だったのではないかという辺り。
要するにあれだよな、鉄の製鉄技術が一時期独占でその後広まったって意味ではないかと言われていたんですがここばかりは同意。
それと産鉄国と庸調鉄の割り当て国の違いなどに軽く触れられていたりもしたんですが、その違いに関しての分析がもう少し進んでいたらなあ、むしろ不思議なのは貢物とさせないならなんで産鉄国の記録をしてたのかって部分だよねぇ、古代なにがあったの。