「企業勃興-日本資本主義の形成」高村直助

私、明治期の金融は大隈財政から始まるのかな、と少し思っているんですが(国立銀行153行の乱立と紙幣乱発での大混乱があっても、事実上それ以前が存在しないという程度意味で)、その次が松方デフレ、多分ここは間違えようがないですよね? 大隈財政の引き締め役って言われてることも多いし。
で、この本で民間企業の勃興期がこの松方デフレのあとの時期になってまして、これ、という特別な事情が語られていたわけではなかったものの、国内インフラ整備の全体像が出て来たのもこの頃からだし、それとどうも国関連の事業や企業などからの経験者がある程度の人数になっていたという側面もあるとのことでそこまで違和感ないかな。
(ある意味で今に連なる大企業みたいな萌芽は少し前からあるんだけども、それはなんらかの形での中央政権の関係だったり藩財政に関わってたりするんだよね。)
この本がジャンルが手広く隅々まで目が行き届いているわりに、微妙に核心まで語られてなかったように思ってたんですが、ああそうか、中堅企業をメインにしていたので全体像に至らなかったのか…。三菱の存在が見え隠れする炭鉱に関してはそこそこまとまっていて面白かったんですが多分そのせいだなぁ。
三菱だけが他の大企業と違って登場していたことにも意味があって、他の中小企業と同じ立場で行動せずに、むしろ補佐的に動き他の企業の資金源になっていたりしていたせいでしょうね。海軍が炭鉱に乗り出して来た時とは明らかに扱い違ったしな。

それとあと、細かい話なんですが明治8年からの海運保護政策を既知のこととして扱っていたんですが、共同運輸(三菱商船のライバル的存在)の保護…ではないよね、共同運輸は明治16年だし、別の話かなぁ。金融機関はもうちょっとボリューム欲しかったな。