「再発見 明治の経済」高村直助

中堅企業が主でちょっとテーマが散逸していた「企業勃興」と比べてだいぶ面白かったんですが(二千錘紡績の一群と筑豊炭鉱はほぼ同じ内容だったね)、日本国内の生糸の流通経路の話、ああうん、甲州街道は使われなかったというのが定説なんですが整備されて大八車や馬車が走れた甲州街道と横浜道と呼ばれた自然道とどっちが流通量が多いのかって言われたら東京まで甲州街道で運んで水運ってほうが自然だよね…。とか。
横須賀製鉄所を作る時点で徳川幕府との間に240万円の借款が成立した、と言われているのはどうもその後の展開を見ると怪しいのではないか、という指摘。
(これひょっとして建設費のローンって意味ですかね、そして正直吹っ掛けられたんかなぁ、という嫌な予感もしないでもないw)
水上運送に関しての数字の見方の指摘、まー、三菱優位っぽいなぁやっぱり。
対アジアと対欧米で貿易競争があったかなかったかがあまりにも恣意的じゃない? という指摘、ああはい、輸出始まってないインドとの間に潜在的競争があるって言いすぎだよ! ここでは珍しく結論出てましてむしろアジア他国の輸出はゆっくりと変化したためそれほどの競争にならず、欧米の機械生産に対峙するのほうがよっぽど厳しかったんじゃないかな、というのにも賛成、商品単位で見るとそのほうが自然な流れだよなぁ。

紡績における水車動力の誕生や、独占の形式によるカルテルトラストは結構有効だったんじゃないかなぁ(それが機能しない場合は独占ww)、という話も、基本的に旧来説への批判という形式を取っていたので内容のわりには読みやすかった気も。しかし細かい。
産業革命の否定はぽちぽち聞いていたんですが、ああうん、今の生産量から見ての「激増」ではなかったって、確かに理屈として不自然だね…。基本賛同でした。