「敗北の外交官ロッシュ-イスラーム世界と幕末江戸をめぐる夢」矢田部厚彦

私正直このレオン・ロッシュ氏のことをフランスの初代公使だと思っていたんですが(ちょうど同時期に領事だったりするのでその辺がややこしい)、初代はベルクールでどうもその路線を継いだのがロッシュさんだったみたいです。
ええと、大雑把に旧体制寄り、というところかなぁ、ベルクールの時代にはまだ徳川幕府寄りでも当然なんですが、ロッシュは徳川慶喜に入れ込んだ挙げ句に倒幕まで完全に見届けてる人だからなぁ。
ところで八幡製鉄所の建造に関しての8百万円ドルの借款、というのは事実じゃなかったんじゃないかな、という指摘を財界関係の本で見ていたんですが、ああはい、計画したものの募集に対してほとんど引き受け手がなくて事実上頓挫していたのね…。
(フランス政府の後ろ盾が得られなかったからだ、ということも言われてましたが。)
基本的には当時のフランスには対アラブ世界との対立を抱え、日本に裂くような軍事力は全く持っておらず、イギリスとの関係を悪化させないように、とか、いっそイギリスの軍艦に乗り込んで日本との外交に行くかとか、結構酷いなこれww
まあ、ロッシュさんはその本国の無関心のためにかなり自由に動いていたらしく、英国2代目公使のパークスさんなんかはずいぶんあとまでちくちく嫌味言ってるなぁ。おかげでちょっと本来よりも比重が高い気がしていたんですが、在日は4年だそうです、濃い。

もともとはサブタイトルにもあるようにイスラーム世界に深く関わっていた人物で、どうも見ている限りではキリスト教だろうがイスラム教だろうが敬虔な信者のことは分け隔てなく好きというか、日本人も特に差別の対象じゃなかったらしいというか。
現代人にはわかるんじゃないかと思うものの、当時はずいぶん異様に見えただろうね…。