「円の誕生-近代貨幣制度の成立」三上隆三

読んでいてわりと妥当だったのではないかな、と思ったのが「円」という単位がもともと中国で使われていた貨幣単位ではないか、という説でこの少し前に香港ドルで使われていてほんの数年前に頓挫したのも同じく円という単位ではあって全く関係ないとするのも不自然なものの、一般的に使われる「yen」の表記は中国ルーツと見るべき、という辺り。
まあ香港ドルが実際に使われ続けていて、中国の貨幣単位が「元」じゃなく「円」になっていたら(併用されていた時期もあり)、多分別の単位にはなってたんだろうけどね。

それと明治4年の時点での新貨幣制度の発足に伴っての金本位制と銀本位制に関しての争いは、まあ、イギリスと政府内との意見の食い違いは概ね納得したものの、実際の明治政府内に実行された「金本位制」の強力な推進者が伊藤博文しかおらず。
この時点で彼は岩倉使節団に伴って国外、権力の座に着くのはずっとあと、ということで、まあ彼が推進したとは言い難いものが…という部分にも同意。
が、そうなるとイギリスの2代め公使パークスやオリエンタル銀行の「銀本位制」の勧めや周辺貿易で使われていたのが銀だった、という事実との兼ね合いを押し通してまで金本位制を推進したのが誰か、というのは結局この本だと謎のままだったんじゃないのかなぁ。
個人的にはそこの事情に詳しいわけではないながら、この少しあとの時代から中央政権と上方系の豪商出身の為替商との対立が始まるので関係あるのかなぁ? ということを考えないでもないんですけどね、こっちの争いの原因も謎とされているもので。
それと金銀交換比率(日本は銀の価値が高く金に替えるだけで丸儲けになって金の国外流出が起こった)に関しての不備はどうもアメリカのタウンゼント・ハリスが押し切ったんですね、こんなに完全な記録で残ってるとは知らなかった。知らないこと多いなぁ。