「明治前期の銀行制度-日本金融市場発達史(1」金融経済研究所叢書2、金融経済研究所・編

例えば養蚕は時期によって大量の卵の買い付け資金が必要で、養蚕家が基本的に資金を持ってない特殊な産業なんですよね、政府主導で横浜正金銀行が当たってたって聞いてたけど、地方の国立銀行に融資を行う形だったみたいですねこれ。
この本には養蚕の特殊事情に関しては書いてなかったんですが、前に読んだ本だとどのように融資が行われていたのかがわからなかったんでちょうど良かったかも。
傍目には横浜と各養蚕に関わる地域の銀行同士が資金融通してるみたいな形で行われているのね、個人的にはそこまで踏み込まれてたら読んでて面白かったと思うんですが、実際そうやってこの辺の情報が利用されてるんだろうね。
国立銀行が各地にどの程度存在し(私立銀行はあるけどこの時期だと本当に三井銀行やあっても大銀行だけの時期ですよね)、どのような傾向があるか、ということも語られていたんですが、やっぱりこれだけ見て各地の傾向がわかるわけでもないなぁ。
大都市圏が強いのはわかるんですが、東北とか四国とか北陸とか、それぞれピンポイントに経済活動が活発な地点があるよなぁ。でも今も案外似たような傾向あるのかも。

それと後半は日本の中央銀行である日本銀行に関して、というより、それを初期の頃に主導していた松方正義氏に影響を与えた経済論文という切り口だったんですが、正直、前半がデータと実数値をひたすら追いかけていて、後半が経済思想だけって、ちょっとバランスが悪かったような、というか、なんで兌換紙幣じゃなかったのか、ということが当時の経済論文をひたすら引く形で出てましたが、明治2年の時点で兌換紙幣で一回失敗してるし…。
金本位制と銀本位制に関しても、政府の中だけでひたすら理論対立の話をされてもなぁ、当時の政府がそんな強くないってことはわりと周知の話だし、うーん、この本勿体無い。