「東京再発見-土木遺産は語る」伊東孝

前に読んでいた本で土木というのはそもそも日本独自の分類、ということを聞いたんですが、他国では実際どうなんだろうなぁ。特に施工方法に違いがあるというわけではなく、わりと別け方は恣意的、というより、ある程度デザインが求められるものが建築、それ以外を土木、という区分になっているのかなぁ、で、一般人がイメージする橋は建築家が作っているような気がする、みたいなことが言われていたんですが、多分それも区分が曖昧だからだろうね。ただ、関わる人たちの意識はだいぶ違うようで、そもそも土木はトータルの責任者の名前を限定して口にするのも好まない、というと相当だなぁ。
なんでも全体の施工に関しての責任は一人のものではないから、みたいなことらしいんですけどね、まあただ、歴史としてまとめにくいというか、土木史が存在しないのもそのせいかなって気もするなぁ。『明治以前日本土木史』って私も時々名前を聞くんですが、まあ、架空の天皇が出てくるというのが気になる、あまり正確でもない、という意見もわかるけど実際に研究がないんじゃしょうがないですよね。

本では前半は都市計画に関して、後半は主に遺構に関してがどちらかというと中心だったかな、東京の東側の地を度重なる洪水から救った荒川放水路や、多摩川の治水工事に関してももうちょっと詳しく聞きたかった気もしますが。
そもそも江戸幕府利根川を無理に瀬替えして今の隅田川のほうに架け替えてしまい(荒川からの支流のように見えるけどあれが本来の川筋、要するに今の荒川の水量があの隅田川のところを通ってたという、溢れるわそりゃ!!)、それ以降洪水に悩まされるようになったとか、そういう話も地味に。
あとはまあ土木史がないばかりに価値が伝わらない、などの嘆きも。遺構残るといいね。