「日露戦後の日本経済」高村直助・編

私が読みたかったのは日露戦争ののちに重工業が急速な発達を見せた、という部分だったんですが(で、どうも関東大震災の頃までに都市人口の増加の原因になったらしいです、日露戦争が明治37年から38年まで、関東大震災は大正12年ですね)。
それが直接語られてる部分はなかったものの、まあぽちぽち周辺事情っぽいのはあったのかな、この高村直助さんのご本って基本的にそんな感じなんですが、既存となる論文を用意してその反論の形で進めていくものが多かったんですが、この本もそんな感じ。
正直その形だと読みやすいんですけどね、ただなんとなく主題を外してる気もするw
この本だとカルテルに関しての美濃部亮吉氏の『カルテル・トラスト・コンツェルン』っていうもはや古典を引き合いに出してらしたんですが、この時期にまとめてカルテルが存在し、そのカルテルがほぼ数ヶ月で消滅した、というのが従来説だが、実際のところは確かに順調ではなかったものの、実際のところは継続したりトラストが強力で事実上の代替になっていたり、発展的解消をしたよ、ということが述べられていたんですが。
ここで語られるべきは日露戦争になんで複数の業界でカルテルが締結されるに至ったのか、という部分だと思うんですよね。カルテルの歴史を扱ってるわけではないんだし。
で、多分それが日露戦争後の重工業のみならず工業全般の隆盛かな、と見当付けてはみるんですけどね、実際には研究者の方にその辺語って欲しかったよなぁ。

この時期に船舶と鉄道がどちらが優越していたかはこの際多分重要ではなく、貨物隆盛の時期に決着多分付けようがないよね全体需要の増加だし。北多摩のデータで見るとまだ農産業の増加のみで工業化や人口増はなく、造船に関してはこの時期に国内回帰が起こり。
養蚕はどうも質の問題で悩んでるのか、金融制度は整いつつあるのかなぁ。