「鉄と人体の科学」岡田茂

鉄が少ない環境だとガンの増殖が抑えられるらしいんだよ、ということを聞いて渡されたのがこの本だったんですが、治療が難しいC型肝炎(ウィルス性なので、ウィルスも死ぬけど人間も非常に苦しいみたいな)も献血の要領で毎月血を抜いていけば増殖しにくくなるって、マジですか。
すでに理論はわかっていたので、この方が行ったミャンマーの地では最終的に実践することになって、B型のほうにも効果があることが判明したのだとか。
う、ううん、そもそも採血針などの使いまわしをしていた、C型肝炎の検査に関してはアメリカが特許を押さえていて非常に高い検査費用が掛かり(日本では負担出来るけれどミャンマーの状態だと無理だとか)、などの状況が病気の蔓延の理由だったりもしたんですが、この方の治療が進むに従って徐々にその辺の意識の改変が起こったのも偶然ではないのかもしれませんね。日本でもかつて輸血後に肝炎が当然だった時代は「そういうもの」として受け入れちゃっていたようなんですが(針の使いまわしに関しては記憶がある世代の人がちょっと植えにいたりしますね)、技術のあるなしとは違う認識の部分も違ってくるのかもしれないなぁ。採血だけで治療が可能ってわかったら、それは自分たちで制御可能って意識になっても不思議ではないんじゃないのかなぁ、と。

ちょっと不思議な体裁の本で、戦後、戦争から帰って来たお父さんとの生活や、医師を目指したという経緯や、研究室に入ることになった理由や、ミャンマーの地に行くことになったという話が鉄分と人体の話と妙に不可分なんですよね。
理屈や理論の部分までするっと頭に入ってくるんですが、その理論も別に携えていったんじゃなくてもともとその研究をしていたっていうんですよね。巡り合わせの本ですかね。