「地図で読む戦争の時代」今尾恵介

戦時改描というのは最近時々聞くようになった単語なんですが(私がその時代の本を読むようになったってのもあるだろうけど、戦後半世紀を過ぎてある程度客観的な研究者の人も増えてきたって認識でいいんじゃないのかな)、大雑把に言うと戦略上重要な地点を地図ではわからないように暈して描くってことらしいんですが。
まあこれがいいか悪いかはともかく「後世それを見て意味がわからないと大変だよなぁ」と著者の方がぼやいてらしたのが全てってことでいいんじゃないでしょうか。戦中ぎりぎりに作られてた高尾山のトンネルの中の中島飛行機とか、あれ、アメリカ軍が位置把握してなかったみたいだし(どの道八王子が軍事工場多くてすぐ側まで来てたんですけどね)、案外最初から最後まで地図に描かないってのは有効だった気もするし。
でも正直、昭和6年の地図を昭和10年代になって粗雑に書き替えたところで自己満足にしか過ぎなかったと思いはするかなー、と。

その中でも綺麗に辻褄が合わされてる地図と、いかにもなにかあるなってことが素人が見てわかる地図とがあったんですが、まー、あれだよな。物がダムだとそれを本気で隠したからって戦時協力がどうのと即座に判断するのもちょっと違う気はするかなぁと。
個人的には著者さんが褒めてるものは確かにこれは上手い、と思ったんですが、一部は「こんなに雑だとすぐに鉄道の操車場だとわかるだろう」と言われても、どこを指してるのか見付けるまでに苦労しました、見付けられなかったのもありましたw
(しばらく考え込むと路線の終点のところが真っ白く抜けてて、軽く路線が曲がってるところは周囲に貨物なり施設があっても不思議じゃないって思えたんですけどね。)
これはこれで、過去の記録として面白いんじゃないでしょうか。