「食と建築土木」後藤治/二村悟

ここに出てくる建築物はだいたい農作業の合間や、漁師の換金用や保存用のためなどに食品を加工するためのスペースだったりとか、お茶っ葉を覆うための空間を自然物で作ったりとか、まあ正直なところ現代になってどんどん数を減らしていって、それこそこの本の人たちがその伝統を残して欲しい、ということを希望すると土地の真面目な方に「心があれば物がなくても」などと言われてしまうなんてことも語られていたんですが。
どちらかというとこの本はだって面白いじゃない、という観点で作られてるんですよね。
渋柿干してるところなんてのを地元の観光業界の若者が要領よく話してくれて、そうすると干してる最中の時期にも行ってみたくなるとか、うーん、機会があったらプラスアルファで気になるかも、見たことないもんな。
建築のほうの人を交えて、これからの農業の在り方っていうと、どっちかというと説教をする側って気もしないでもないんですが、昔の農家のほうがむしろ兼業が普通で専業で食べられてた時代なんてそんなにないんじゃないかなぁ、だとか、今の出稼ぎってやたらとネガティブな印象だけど、もともとはそうでもない、冬の間に畑が出来ない土地を離れるって程度の意味でしかなかったんじゃないかな、とか。
作ったものが美味しかったら自然に残るだろうし、棚田だとかみたいに観光業のためだけに負担を強いたりしたらやっぱり駄目になるんじゃないかなぁ、とか、やっぱり外の人間からすると面白いよね、とか、なんというか軽いんですよね、いろんなスタンスが。

今は農家は生きていけないって時代なんですが、どっちかというと真剣さが足りないというより、一つの手段に固執してしまってるだけなんじゃないのかなぁ、とぼんやり。
建築物としては簡素で、期待したものとは違ったんですが、面白い本ではありました。