「古代・中世の女性と仏教」日本史リブレット016、勝浦令子

古代・中世の女性と仏教 (日本史リブレット)

古代・中世の女性と仏教 (日本史リブレット)

 

 

正直この本の著者さんはわりと一続きの教えとして扱ってはいるものの、「修行の場において女性は副次的な存在(インド)」「男の修行僧は女と交わると邪念が生じるので修行終わるまで避けようね(中国)」はともかく「女に生まれたという時点で地獄に落ちるほどの重罪(日本)」はやっぱり全くの別物じゃないですかね…。
尼僧寺院がいまいち一般的でなかった、という程度なら別にそんなにわからないでもないんですけどね、特に苦行なんかは女性がするものではないって認識だしね。
それとあと、日本においては尼僧がまず中心になって国外に渡り、その庇護者も女性だった、というのは新しい宗教の流れにおいては一般的で、それが評価されない傾向があるというのもある程度は仕方ないと思うんだけどね(なんというか記録に残りにくいようなのです、研究が未熟である段階ではなかなかそこまでいけない)。

そして女性であるというだけで罪があるというのも、日本仏教以外にもあるのでそこまで問題があるとは思わないものの「仏教の教えでそうなっている」という説明がされているのはさすがに感心しないし、実際に中国やインドなどの僧侶と交流するとなにこれ、と聞かれてしまうのですごく困るなんてのを前に読んだことが。
そもそもこの本の中ではその当の女性の扱いの変遷みたいなものが主に扱われていたんですが、試行錯誤の結果「血の穢れがあるので罪」という理屈を思いついたことでようやっと市民権を得て女性の地位を低下させることに成功した、という歴史にしか見えなくてさすがに困惑しました、だ、だいぶ時代が下るんだなぁ…中世だったのか。
さすがにここまで来ると、なにか目的と意図があったのかなぁ、と思わないでもないんですが、正直好ましい歴史とは言い難いよね、さすがに。