『日本の美術142 正宗-相州伝の流れ』本間薫山・編

面白い内容ではあったんですが、正直なところ刀全体の流れや多少の考え方のプロセスみたいなものがわからないと読めない部分はあったので、遅く読んで良かったとも言えるし、もともと地域の刀工らの集団である相州伝がまず存在し。
その集団の工法に近いものも「相州伝」と呼ぶ、というような傾向に関して明言してくれていたのは初めてだったので、もう少し前にこの文章読みたかったです…。
これ、相州伝が特に顕著なのだと思うのですが、他の五箇伝においても同じなんだよね。
(ただしこの五箇伝そのものが確か室町くらいの刀の分類や鑑賞が一般的になってからの用語なので、そもそも後付けでそう呼んでるってのもあるんだけどね。)
相州伝なんてのはそれでもかなり共通の作風があるとは思いますが。)
 
なのでまあ、この本の中でもちょいちょい出てきたように長谷部派が山城伝になっていたり大和伝になっていたり、相州伝に数えられていたり、というのも、どうも相州伝の血統でのちに京都(山城)に引っ越したよ、みたいな程度の状況らしいしね。
大和伝と相州伝というのはそもそもちょくちょく混同を起こす、というのもあくまで極め物に関しての話なんじゃないのかなぁ。
私、この中に出てくる貞宗って五作の一人として認識していたんですが、そもそも有銘の現品が一切ないんだね。
そしてどうも出来の良さの部分で刀工を決める、みたいなところのようなので、有銘が一つもない上で出来だけで決まっている、ということになるのか。不思議だわ!
まあ、正宗にも銘が少ないらしく、銘を付けると土地だの地位だの年月まで刻むこともあるのでなんかそれ以前とも意識が違うのかもね、面白かったけどややこしいわ。