「新装版 悪霊列伝」永井路子

そもそも日本には御霊信仰という伝統があるわけですが、まずそこのラインナップを見るからになんかおかしい、というところがこの本の始まりであって、どうもまともというか比較的知的というか、怨念を振りかざしそうな人がいない気がするというのがその趣旨。
確かに聞いてるとちょくちょくそんな気もするよねー。
そもそも御霊が一旦祀り上げられるとあっさり庶民に益なす存在になるというより、実際そんなに気難しそうな人がいないというか…。
本の中で永井さんはこの演出をした人間たちはそもそも全く怨霊など信じていなかったんじゃないか、ということを語っていたんですがあるいは最初から御しやすいところを選択していた可能性もあるのかなぁ。
 
で、怨霊に付きもののお家争いですが、天智天皇の血統と天武天皇の血統に関してはこの分離の仕方で納得。
それとあと、院政初期の頃に鳥羽上皇が自分の叔父に自分の嫁を寝取られて、という話に関しては話半分で聞いていたんですが、あー、確かにあとの展開を考えたり当時の風潮を考えてみると確かにそんなに違和感はないかも。
むしろ自分の子だと思っていたのだとすると、よくわからん展開になるみたいね。
というか前々から見ていた八条院に関してもどうもこの血統の問題になるらしいね(寝取られたあとに娶った正妻に相当する女性との子、その子たちに皇位を継承させるのはちょっと大変だった模様)。
ここでどうも姻戚関係が変化したのが時代を動かした気もしないでもない。
女性の関わりを省くと歴史ってちょっとわかりにくくなるねぇ…。