「寺社勢力-もう一つの中世社会」黒田俊雄

ここ最近かなりごてごて立て込んで仏教関係の本を読んでいたので若干本ごとで触れていた触れていないの記憶が怪しくなっている部分があるにはあるんですが、この本は中世史やるんなら一度は読んでおいて損がないんじゃないかしら。
逆に宗教史という意味だと必ずしも必須でもないような気もします、全体宗教史を読むなら読んでおいたほうが早いんじゃないかとも思うけど。
すごく大雑把に言うと大寺院とそれと連動した神社がどのような行動を起こし、そこからどのような新宗派が生まれ、どのように社会に影響を及ぼしていったのか、というあくまで宗教を外部から見た社会を語った本なんだよね。
同じ著者さんの本を見ていたら通史の1冊を担当していたのも正直納得。
本来「古びてない」という言及になるとあんまりジャンルが進んでいないというニュアンスになってしまって良し悪しなものの、たまにそういう意味ではなく基礎研究としてこれはこれでどんなに時間が経っても読む意義があるって本もあるよね。
 
で、どっちかというと個人的には鎌倉初期にその源流があると語られている(初代とされる法然だとそうでもないものの、その弟子筋である親鸞などだと正直特に)こともある浄土信仰の源泉が鎌倉時代の中期くらいの空也だというのが収穫。
いや、そのくらい調べればすぐにわかるだろうって思うんですけども、人名がわかってれば出てくるけど、浄土信仰という単位からだと調べられないんだよね…。
(理論の大成者という意味で法然が最重要視されるところはわかるにはわかる。)
もちろんそれ以外にも神社がどのように大寺院と連動していたかや、空海最澄などが宗教界にどのように影響を及ぼしたのかなども、というか内容は全部面白かったよな。