「ゴルフ場殺人事件」エルキュール・ポアロ2、アガサ・クリスティ

ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


えーととりあえず、タイトルのわりにゴルフ関係ないよね。というか、哀れな悪女ネタはこの頃から(2作目っすね)あったんだなというか、いやホント、後から思えばかなり効率の悪い悪女だと思います。
とある奥さんが男たちに押し入られて縛られて、夫が連れ出されて刺し殺されて。
奥方を積極的に疑う理由はないものの、しかし出奔した息子がその晩近くに帰っていたとなれば話は別というか。あと隣の家に夫の愛人とその娘がいて(夫の子ではないです)、自分の息子と恋仲だとまあ怪しくはある。


で、あと証拠品を盗んでしまう美形が現れたりして。
見事なまでにヘイスティングさんが引っ掛けられました、まあ美人には弱いからねこの人は。大抵生温く(ポアロさんに)見守られているわけですが、たまに口を出してくる時は相手は悪女です。この二人の関係はいつ見ても保護者と被保護者のそれだと思います。
しかしまあ、その美形が最初の被害者の息子と恋仲だと気付いても彼女のために心配してやるところとか本当にいい人なんですが、つーか彼はいつも貧乏くじになっても紳士的なのでそこがいいところなんだと思うわけですが。奇跡が起こらないと成就しにくそうというのもまたわかって欲しい心配のしどころです。


初期作ですが事件の根が全て過去にあり、「現在」はなに一つ見た目の通りではなく。
ミステリの定番トリックである“双子”の使い方が明らかに間違っているというかそっちかよというか、若い人同士の恋愛になによりも重きを置く、未来を大事にするポアロさんという原型は見てとれると思います。いやでもマジ、双子そっちなんだ?!