「国際人道法」モーリス・トレッリ

一言で言うと“国際人道法そのもの”を詳細に紹介した本です。
うん、各項目に多少の歴史的な関係や記述はあるんですが、「これこれこういうこと」を禁止し、しかし「これは例外」ということを細かく細かく規定していった本で。要するにいっくら戦争だってルールは必要だろう! という理念を大前提としたものの、防衛の名の下で侵略かそうでないかを“前もって”どう判断するのか、というジレンマが。
そんなもの、事態そのものを眺めたらわかるだろう、という気のしている方のほうが若干多いかなと思いますが(私は全くそう思ってない、マスコミによる印象操作は最近有名か)、例えば戦争対立国の兵士はあくまで自国のためだから犯罪者として扱うべきではないものの、自国へのスパイ行為を行なった場合は拘束せずに救っていいものか、、、という問題が(拷問はどの場合も禁止)、そして赤十字や各種医療団体の名の下での軍事活動は禁止するものの、その徽章を取り外した場合に軍事活動に利用していいのか、という問題や。
これはなんでだかわかりませんでしたが、病院船及びクルーの徴収は不可、とか。
迫害地域に入っていった医療関係者は世間一般にその地域の情報を公開するかどうか、という問題(公表した場合、その後一切の出入りを禁止される可能性が高いわけです)(しかし黙っていると当然「迫害に加担するのか!」という非難が)。


ええと、占領地区における文民の保護と、赤十字他医療従事者の扱い(占領をした側の兵士の治療に当たることは良い)。そもそも≪戦争状態≫というものをどう定義するのか、という問題、内戦の場合、政府が反政府組織を弾圧している場合、その逆の場合、等々。もう、許される殺人と許されない殺人の定義の世界なんですよ、これ。端的に言っちゃうと。
平和の構築ってまあなんというか、ちっとも平和じゃないなぁ、としみじみと。