「ガットからWTOへ−貿易摩擦の現代史」池田美智子

ものすごく大雑把にガット(GATT)というのもWTOというのも多国間の貿易の調整を行う組織で、まあ、正確に言うとガットのほうはあくまで「条約」であって常設機関じゃないんですけどね、ええもう、常設機関の構想はあったものの流産させられたっつーか。
そしてまあ、この冷静なタイトルに反して日本が戦前戦後、どんだけ世界各国から酷いことをされ続けたのか、ということを延々と聞かされる構図になっているのですが。
ぶっちゃけまして“ダンピング”って正直それ自体は犯罪じゃないのよね。


例えば業績悪化による従業員の賃金カット、円安を目的とした市場介入(円高だと海外での日本製品が値上がりしますので)、あとは製品に補助金を付け、他国製品と値段格差を付けての海外流通なんてのは完全に違法なんですが、でも企業そのものへの資金援助って別に貿易振興以外にもいろいろありますやん。
要は悪意の有無というより、実際に特定の国の市場に損害があるかないかが重要で。
そして英国から非難されていた「売り浴びせ」というのは日本はよくやってます。
もちろんあれです、悪意なんて全くありません、ただ日本人がいるところに行きたいだけなんですよ、一緒に行動したいだけなんですよ、国民性だから仕方ないじゃん!
というのはこの本を読んでの感想、というのとは程遠いんですが、これを頭に入れてこの本を読まれると、日本が世界市場から追い出され、再度受け入れられるまでの「不器用さ」というものが実に身に染みますかと、アメリカさん味方になってくれてありがとう。
(しかし企業間の提携による政府機関の研究主導は事実です、ええもう、当時は非難されたそうですよ、だって国益が掛かってるんだからしょうがないじゃんな。)
ちなみにこの本の時間軸の後、戦後最大の日米貿易摩擦が待っています、あははw