「死体が多すぎる」修道士カドフェル2、エリス・ピーターズ

死体が多すぎる ―修道士カドフェルシリーズ(2) (光文社文庫)

死体が多すぎる ―修道士カドフェルシリーズ(2) (光文社文庫)

とあるイングランド王が息子を残さずに死んでしまったもので。
すでに外国に嫁いでしまっていた娘・女帝モードと、彼女の叔父のスティーブン王が争うことになったという背景がまずあるのですが。しかしこれ自体は、どっちが正義でどっちが悪かはちょっと言いづらいものがあるような気もしますね。単に歴史。
そして、どちらかに付くことを迫られ、右往左往する人らの話、というか。
この本自体はその真っ只中で起きた、けれど個人的で卑劣な犯罪の話かな。


まず、感情の起伏の激しいスティーブン王が、とある城を攻め落とし。
その時点で城の主とその盟友を逃されていたことが判明し、その八つ当たりのようにして城の残留者94人が縛り首にされましてね、カドフェルさんのいた修道院でその死体を引き受けることになりました(城に仕えていてももとは町の人なんだね)。
そうしたらなんか一体多い、95人いたわけですよ。
なにぶんにも一人くらいいいじゃん、と言いたくなってしまうわけですが(94人と95人じゃねぇ)、けれどそれは一つの犯罪者を見逃したということになるのです、とカドフェルさんが周囲を説き伏せ。
王には「貴方の威光を利用して卑劣な犯罪を」と言ったもんで効きました。


消えた城の財宝に、少年の成りをした少女、草むらに追われた少年。
兄が敵方にいる美しい女性に、家族と違う道を選んだ不敵な男。
道が別れていたとしても、人間としてはどうということもないと老修道士カドフェルは言い切ります。許されざるべきことは他にあるのだとね。