「オスマン帝国−イスラム世界の“柔らかい専制”」鈴木董

近代以降のトルコの、まあ、民族的な祖先である“オスマン帝国”の本。
一言で言うと帝国です、巨大帝国、ローマよりも広いんだっけ少し負けてたんだっけ? まあ、規模的には似たようなもので緩やかなシステムと巨大な軍事力でもってつながり、各文化各民族を内部に抱え、他民族であってもコネがあれば上に上り詰める可能性を最後まで持ち続けたといういろんな意味で柔らかい帝国だったのだとか。
んで逆に、硬直化したら崩壊も早かったわけですが。それでも6百年以上続いたんだからその時点で大したものだよなぁこれ。


んーと、気になったのは「デウシルメ」(キリスト教徒の子どもを連れ去って兵士として育てる制度)、正直イスラム系や遊牧民の帝国で他にこんな制度見たことないし、それほど酷い扱いではなかったとはいうものの保護民に対して行なうことじゃないよなぁ?
ユダヤ人がその対象外だったのはともかく、トルコ語が喋れる場合、一人っ子、すでに自活した生活を送る子どもも除かれた、とあったんですが、意図なんだったんだろうな。
とはいえ、基本的には一気呵成にやって来る怖い存在ではあるものの。
一旦それが収まってしまえば税を納めるか改宗によって保護民となり、んで実際、反乱を起こさない限り帝国そのものが守ってくれるなかなかいい支配者。ユダヤ人がある程度日本人にもわかりやすいから例に出されていたんでしょうが、反ユダヤである帝国内部の組織がかなり早い時期に叩き潰されたような事件もあったようです(ユダヤ人なにやったw)。
(多分いつもみたいに熱心にせっせと働いていたんだと思うけど。)
西欧にとって恐ろしい存在であるとともに羨望の的でもあったようですが、ああ、その分その幻想を今も引き摺っているような気配がないでもないか。頭堅いよなぁ。