「南北戦争・再建の時代−ひとつの黒人開放運動史」本田創造

著者さんが「この本は南北戦争や黒人開放運動の公平な通史ではないよ」と書いてまして、初めて読むのにはどうかな、と思わないでもなかったのですが。
まあ、人間として公平ならばいいんじゃないでしょうか、でもやっぱりちょっと前半読みにくかったです、事情がわかりにくいというかダイジェストっぽくて。むしろ後半の“南北戦争”が終わってからと、リンカーンさんが必ずしも奴隷解放のために戦争していたというわけではなく、しかしその流れが無視できないものになった時は潔く観念して積極的に受け入れるようになったという姿勢だったという辺りでしょうか。
うん、聖人君子もいいけど、それもまたいいじゃないですか、人間らしくて。


そもそもアメリカの黒人奴隷というのは先住民ではなく。
労働力としてアフリカ等の地から連れて来られたような人々。
そしてイギリスから始まった奴隷貿易の解消はすでにヨーロッパの地ではほぼ完了。
そいでもって、この戦争は南部の大資本と北部の、んー、なんというか知識層、だとちょっと語弊があるんですが、なにも奴隷制度に頼らなくても身を立てられるちょっと進んだ層との決裂が引き起こしたものと言えるらしく、むしろ「奴隷の開放」はその戦争を乗っ取った黒人兵士やその賛同者によるものだったんだってさw
そして奴隷だった彼らはすでにこの土地アメリカで生まれたのだと宣言し。
瑕疵があろうとアメリカを愛すると、自分たちにその国民たる権利を与えろと唱えたわけですよ、リンカーンさんが暗殺され、副大統領から昇格し、奴隷制の事実上の復活を是認したジョンソン大統領はなんとなくその時に負けたような気もします。
この話に完全な悪も正義もおりませんが(被害者はいる)、そのほうが美しいよな。