「勝者の混迷(上」ローマ人の物語6、塩野七生

ローマの地を、他者に開こうとして(最終的に市民にまで反対されたのはここだよね)、殺されてしまった二人の兄弟を皮切りに、対外的な問題は解消されつつある時代の内側からの混迷を扱ったこの巻(上下巻ですが)。
要するに問題の根っこは「戦争」を義務として負っていたからこそ誰もが認めていたローマ市民の特権を、戦争が止んでも維持しようとし続けたことによるのかなぁ、と。


まず都市内部の貧富の差(と搾取)の解消を、かつての英雄スキピオ・アフリカヌスの孫兄弟が一部法案として試み、死と引き換えに一部は成立。その後、家柄も後ろ盾も、要するにしがらみがすっかんとない軍人マリウスがそれまで「非常事態要員」でしかなかった軍を職業化することで二重の意味でローマ市民の健全化を実現。
(当人にはその意図はなかったらしいんですがw)(要は望まない人が軍に取られることもなくなり、軍人が一応は身分が保障されたことになったわけですね、まだこの頃には必要経費支給と同じ給料しかなかったようですが、それまで扱いが無職だったのが職業としての兵士になれば周囲の扱いも全然違うと思う。)
で、次に残ったローマともともと同系統の民族≪ラテン市民≫へローマ市民権を与えるかどうか、という問題に関しても同じマリウスさんが周辺地域の反乱が起こったため、その反乱の講和条件としてなし崩しに決まりました。
(そしてやっぱり「それしかないだろ」という態度しかない、無骨すぎて素敵ww)
が、このマリウスさんと、彼が権利を与えた“新しいローマ市民”層から様々な問題や、権力闘争のようなことも起こってくるよ、というカオス状態が下巻に。
そのカオスの中に現れるのがユリウス・カエサル、次のローマの構築者ですねぇ。