「ド・ゴール」村松剛

この本は第二次世界大戦の中、連合/英米側についたロンドン亡命政府“自由フランス”のド・ゴール(この頃には政治家というより純粋な軍人ですね、カリスマもいまいち)と、ちょうど対比するように存在していた、ナチス・ドイツ軍に降伏した“ヴィシー政権”を象徴するペタン将軍が順に語られる、という体裁ではあったんですが。
まあ正直「これ、ペタン将軍の本じゃね?」と思うのは私だけではないような気もしないでもないんですよね、どう考えても記述がペタン将軍側のほうが多いですし、本の結末もペタン将軍の死、という辺りが特にね。
少なくともとりあえず『ド・ゴールとペタン』というタイトルだったら少なくとも絶版にならずに今も生き残ってるんじゃないかなー、とちょっと考えてしまったんですが。
(ド・ゴール氏は前半生と後半生で立場が全然違いますし、核兵器と関わっちゃったから日本ではあんまり良い印象がないんですが、いっそ「ww2時代下のフランス」と明言するのはありだったんじゃないでしょうか、その観点だとわかりやすいよね、この本。)


ペタン将軍ってのはww1の時代の英雄で対独軍事防衛「マジノ線」の発案者で、一度は直属の部下だったこともあるド・ゴール氏のこともとても可愛がっていたみたいなんですよね、とにかくまあ、上役と揉め事を起こすド・ゴールを庇っていたのだとか。
部下のことを思いやる評判の良い人物で、むしろそのために高齢だったのに引っ張り出されたようなところがあり、ドイツへの降伏も、本当に国民の生命を考えてのことだった、というところまでは彼に対しては皆に認められるところなのではないでしょうか。
けれどww2でこの師弟の道は別れ、ペタン将軍の選んだドイツ軍は信頼に足るような相手ではなかった、という結末なのかなぁ。弟子の戦いはむしろ戦後なんでしょう。