「パクス・ロマーナ(上」ローマ人の物語14、塩野七生

ユリウス・カエサルの後継者争いとしての内戦を経て、本格的に“オクタビアヌスの章”へと突入したわけですが、まずこの方は体が弱い、戦も弱い(カエサルさんが付けてくれていた軍事上のパートナーも、どっちかというと手堅い極地戦向き)(ぶっちゃけて必要以上に政治向きのオクタビアヌスさんと合わせると二人前かな?)。
その上、身分も低い、カエサルさんとの係累も些か遠め、なのでまあ、涙ぐましいまでに足場作りに苦心しているとは思うのですが、巧妙といえば確かに巧妙といえるとは思うものの、なんか回りくどいというか、時には「性格悪っ!?」とすら感じるそもそも地味ぃな根回し戦略の彼は、正直実に塩野さんの文体に合っていたと思います。
いや多分、これを読んでオクタビアヌス氏、もといアウグストゥス氏(なんか偉い意味のある変名みたいです、細かいことは知らん)自身もこれを読んで喜んでくれるんじゃないでしょうか、言い負かされそうになって議場から逃げ出しても、息子が辛い目にあったと自分の日記に記しても、“自制の人”という表現一つでずいぶん印象が違うよな。
(まあ、そもそもまだまだ若いんですが、この巻だと。)
ともあれ、周辺地域まで含めた足場固め、元老院に気付かれないように進めてきた骨抜き作戦もそろそろ大詰め。
次巻では、怒涛の巻き返しも見れるかな。


対外的にはこの時期に防衛線そのものが後退(この後の巻でもぽちぽち出てきますが、後世の評価はまた別として、同時代ではどうしても非難されるようで;)。
国内に関しては、得意分野は得意だけど苦手分野はとことん苦手なアウグストゥスの方針なのか、適所適材の人事採用が進んだ気も、マスコミ担当って古代だと珍しいなー。