「東ゴート興亡記」松谷健二

もちろん“彼ら”の移動については昔から、やれ食い詰めたのだ、人口増加だ、いや、気候変動が、といろいろ言われているわけですが(どれも正しいんだと思います)、でも本当にそれだけかぁ? と疑問に思う著者さんももっともで。
ゴート、というのはそもそもいつまで経っても「気性の荒い」という印象の拭えない今も立派に通用するゲルマン民族(ドイツとか)の一派で、途中で枝分かれして現スペインの地域にて曲がりなりにも王朝と言えるだけ存続したのが西ゴート王国。
イタリアの地、西ローマ帝国(滅亡カウントダウン中)(明確にいつと言うのかは諸説ございます)のお膝元を選んだのがそもそも拙かったんと違うかなぁ、と著者さんが言っておいでの通り、わずか数代も持ち堪えられず、潰えたのがこの東ゴート王国
薄い本で正直あまり馴染みのない時代を扱ってるわりにはわかりやすいんですが。
とにかくまあ、短いですね、うん、端折ってるとも言いにくいです、ちゃんと登場の王族やそれ以前から人物一人ずつは丁寧ですし。そもそも歴史が短いっつーか。
ところでこの王国は西ローマ皇帝を退位させたゲルマン人傭兵・オドアケルを征伐したことによって成立、今のフランスに近い土地を貰ったものの、イタリアがいい、と言い出してしまったのでうん、実力では勝ったものの、政治では負けたというか。
現フランス北部に居を構えたフランク王国には負けてしまったわけですよ。


とはいえ、それ以外の点、国内運営などに関してはなかなか目端の利く、蛮族とされていなが賢いところのある人たちで、人には寄りますが女王も含めてレベル高め、この時代を書いた小説で「ノルマン人の船に彼らが収容された」という展開も、それを紹介した気持ちもわからないでもないかなぁ(イングランド王家などはノルマンの血ですよね)。