『美の巨人たち』香月泰男「おもちゃ」(日本)

香月泰男−Wikipedia
(1911.10/25−1974.03/08)


“シベリア・シリーズ”も≪おもちゃ≫も大変にどちらも素晴らしい出来ですし。
それが紛れもなく同時期の同人物の手から作り出され、描かれていたのだということが感動を深めるというのは一旦認めておいて。別々に飾っておくのがやっぱりいいような気がしないでもありません、香月さんという人は紛れもなくその折衷だったと思うんですが。


とはいえ、それは画家の≪おもちゃ≫が描いている絵や。
彼のアトリエでパイプを咥えている絵なんかで充分なんじゃないでしょうか。
どことなくぼんやり生きて美術教師になり、結婚をし、絵を描いていたら戦争に取られ、2年をシベリアですごし、本当に生きて帰りたかったんでしょうが。その、人生全体と比べるとほんの短い2年に、生涯を囚われてしまったのだというのですよ。
何枚かのシベリアを描いたあと。
けれど、そのタッチ、手法では到底シベリアは描けないのだと止め。
なんというか、まあ、その後の人生を“シベリア・シリーズ”に捧げたわけなのですが、ほとんど村から出ず、そこを「私の世界」と呼んで愛し。
その辺のいらないものでもって小さな人形を作りました。
歩けるぞ! という、愉快で悲しい詩がぴったりの、可愛い可愛い人形たちですよ。
いらない子だったからかな、と番組は言うのですけれどね。
不幸な人生とは思いませんが、寂しかったんでしょうか、でも、なんにだろう。