「大真面目に休む国ドイツ」福田直子

正直に申し上げてしまえば、タイトルから予想したよりずっと「楽しくない」本だったのですが(最初少し笑えたんですが、ある程度進むと無理ですね、身に染みるというか人事じゃねぇっつーか)、タイトルから予想していたよりもずっと実になる本でした、ええ。
まず欧州でもかなり長いドイツの“6週間もの休暇”を取り上げ。
それに伴った海外旅行の躍進、日本の1週間の旅行費用程度しか掛けないんだよ、という部分を聞いてしまうとどんなに素晴らしいんだろう、と思わないでもなかったんですが、うんまあ、6週間を一歩もホテルの外に出ず、ドイツ語が通用するところに群れ集まり、安いパック・ツアーに飛びついては確認を怠って酷い目に(泣き寝入りはしまへん)、となると、ある程度金掛けてでも安全を! という日本人とそう大して差異があるような気もせず、とはいえ、旅の達人ともなるとやっぱり凄そうです、うん、毎年のことなのでほとんど世界廻っていてもそれは全く不思議じゃない。


そして翻って国内に目を向けると別に生活レベルなんてものが高いとは言えず。
社会保障は充実している、というもののいまいちその実感がなく、高い理想を掲げていたはずの東西ドイツ統一も東ドイツにババを押し付けるような形でじくじくと停滞し、東ドイツ人(国内では東西分裂がなかったかのように振舞うそうですが)は微妙に態度の横柄な西ドイツ人よりも辛抱強い、という評価を得ている、と聞くとなんとも奇妙な気分に。
この本自体が2001年の本で、また10年近くも経っているのでどんなふうに変化しているのかはわからないんですけどね、いい方向に行ってるといいんですが。
ある意味で根底にあるのは働くことが評価されない、学位も役に立たない、という閉塞感なのかなぁ、と思うのですが、それでも彼らは生真面目に長期休暇は取るのだとか。