「サンバの国に演歌は流れる−音楽にみる日系ブラジル移民史」細川周平

ブラジルの日本人社会の中にあったのだという“勝ち組”“負け組”というのがどうにも理解できなかったんですが(いや、なんか日本の戦争と絡めて記述してあったもので;)、背景は無視して成功者とそうでないグループってことでいいのかなぁ?
日本人にとってのブラジルという国は、日本とは地球の真裏という位置、移民・日系人、サッカー、南米最大の国、コーヒー、農園(あとついでに、リオのカーニバル辺りかな)、というところでほぼ多分打ち止め。
移民当時に独特の集団見合いなどで薄気味悪がられ、もちろん理由はそんなところではないのですが(ただ日本人移民の極端な本国志向は理由の中にはあったでしょうね)(見合いそのものが日本人以外との混血を避けるための措置だったので、ある意味で非難自体は妥当だよな、そりゃ)、政府側から排除されそうになったり、日本の起こした戦争の煽りも受けたり、それで内部でも争いが起こったり。


という、ブラジルの中の日本人社会を、ずっと娯楽、まあプロでもシロウトでもない(要するにアマチュアではあるんですが、プロが不在の社会の中で現実に文化の担い手であった)、のど自慢歌手や(すでに中・後期)、初期確かに存在していたはずなのに、まるで娯楽が存在しなかったことが誇りのように黙殺されてしまった、村々の寄り合いの宴会のこと、何度も賞取り大会と化しながらも形を変えつつ残ってきた歌謡大会の数々から語る本。
日本への望郷の念、どれほど恋焦がれても返されることがない反応。
それでも少しずつ高まっていくこの社会自体の特性。ただしラテン系の文化と交じり合うわけでもなく、世代によってはっきりと別れてしまう習慣、価値観。
一つの民族であるってこと自体、なんだか罪深いことなんだなぁ。