『美の巨人たち』宮川香山「渡蟹水盤」(日本)

宮川香山−Wikipedia
(1842−1916)


生涯二度は同じモチーフを作らなかったのだ、という香山さんなのですが、なんでも明治天皇がお買い入れになったカニだけはすでにこの“高浮彫”という独自の工法を捨て去ったずっとのち、己の晩年、病気を宣告されてのちに猛然と作り出し。
なんとか自分の寿命の寸前に間に合い、というか、これを生み出して1ヵ月後に死去。
「なにかこの作品だけ心残りがあったんかねぇ」とナレーションさんは言っておられたわけですが、それだったら元の作品と取り替えたいと考えるような気もするので(国宝に指定されたそうだよ)、むしろ買い上げた人が重要だったのかなぁ、と思うけどどうだろ。
他の、この高浮彫の物はほとんど欧米の貴族とか金持ちに買われたみたいだし。
ぶっちゃけて近代以降の天皇さまは学者肌で見る目があって信用してますぜ。


あー、もうモチーフ思いつかないしあれでいっか! とか妥協してたら、とか考えてすみませんすみません、むしろ最高傑作の誇りがあったんじゃないでしょうか。しかし正直こんな空前絶後の焼き物(モチーフを完全に一つの焼き物として焼き上げた上に焼き上がり後の彩色なし)の良し悪しとかわからないよ、私は素人ですがプロでも無理でしょうこれ。
しかもパーツごとに土が変えられ、焼きあがると縮む、曲げた場合は少し元に戻る、というのが焼き物の性質な上に土の性質によって微妙に違ったりするのだという。
それこそがまさしくこの高浮彫を香山さんが作り続けられなかった理由なのですが。
職人なのか芸術家なのか、というと、さて職人さんだったのかなぁ?