「プラチナ・ビーズ」五條瑛

正直言って、話のパーツは精密だと思うし、≪社員≫であるアナリストの葉山の父親代わりの恩師へと寄せる感情には胸をしばしば胸を打たれるし、弟の吾郎だとか、同僚の無口な女性の野口だとか、在日米軍である(純血の日本人なのに中身が完全なアメリカ人w)坂上が出会った刑事・志村なんていう端役などですら良かったし。
坂上があるかなきかの程度に抱いている葉山への情のようなもの。
葉山が情報提供者の女性に感じていた罪悪感のようなもの、強迫観念のようなものもなんだかそのまま、丸ごと伝わってきた。惹かれてはいたけれどあれはやっぱり、強迫観念だったんだろうなとも思うのだ、だからこそ彼女のことを何度も思い返さなくてはならなかったし、女優に向いていたとか、真摯だったのか、やたら繰り返したのではないか。
でも、そういうどっちつかずの感情だって別に物語りに書かれてもいい。
そして描かれている内容自体は、まあまあ納得が行くような出来だったと思う。
ただなんとなく、なんとなく陳腐な気がしたのは多分、話を「闇」の側から牽引する謎の男が、過去はどうあれ、すでに余裕がある生活をしているからなのではないかと思う。端的に言えば、大地を見て延々と比喩だのポエムだの綴る飢餓者なんかいねぇww
けれどそれは必ずしも話というか本そのものの欠陥というわけでもなく、要するに最初から丸々とこの男の遊戯に作中全ての人間が振り回されたということなのではないか。
(こう考えると、米軍が事態を静観したことも多分葉山の視点よりわかりやすい。)


だが、事態に真剣になっていた実行者らや葉山が陳腐だとは思わない、そういうことではない、多分謎の男が本当に欲しかったのもその反応だったんじゃなかろうか。
てか、彼は養い児にめろめろになってたほうが凄みがあったw なにするかわからん。