「ミカドの肖像」猪瀬直樹

正直とても面白かったのですけれども、これはあれだね? 前評判や帯に反して堤康次郎氏(しかしあくまで西武グループ主体のイメージな気がする)の本ではないんだね、ということを飲み込むのに時間が掛かってしまって読み進められず、一旦返却するというようなことになってしまったんですが、読み終わってから思い返してみるとそんな特におかしな構成ではなかったというかw 要するに前半の堤氏があまりにもインパクト絶大すぎたんだね、と褒めてるんだか貶してるんだか自分でもわからない結論に落ち着くわけなんですが。
繰り返しますが堤氏の本でも西武関係の本でもないです、あくまでも彼が皇族から買い取った土地で作り上げたプリンス・ホテルという一連のシリーズ(開業したのは息子の堤義明氏ですが)に関しての当時の皇族の位置みたいなものが語られていただけで。
ついでに堤氏当人の商売のやり方っていうか、戦災が迫る中で怒鳴りながら土地を買っていた、とまで形容されるど根性っぷりも語られていたけれど、それはそのあとの章のオペレッタ・ミカドに関わった脚本家やら演出家やら、さらに彼らに縁が深かったホテル事業者まで脇道として語られていたのとあんまり変わらないよね。
そして、なんでそういう部分まで語ったかというと実はあくまでも背景となる時代の様相を伝えたかったんじゃないのかなぁ、とも思うんですよね、別に間違ってもいない。


他にも国歌たる「君が代」の見事な曖昧さっぷりやら明治天皇の肖像画ってあれさ…というようなこと、皇居近くのビルが誰だかよくわからない主体(わかるんなら“異常”ではないと思う)により低く建てることを延々と言下に強要され続けるとか。
そういうじわじわと周辺から迫る本のはずだったんですけどね、同じシリーズとされる題材見てるとなんか堤さんと西武に乗っ取られたかなぁ、と思わないでもなく。