「パリとセーヌ川−橋と水辺の物語」小倉孝誠

フランスの首都パリは、かつてセーヌ川の中州である“シテ島”から始まったのだ、という歴史はまあいいんですが、正直、その始まった頃の本というのはやっぱり無理なのかなぁというか、そもそも史料が少ないことは知ってるんですけどね。
(考古学資料、と期待しようにもずっと使われ続けて来た土地か。)
そもそも大人しくすることを目的として工事が行われたという日本の河川と違い、ヨーロッパの河川というのは大抵別の方向に手を加えられ、今も運河としての機能を果たし続けているのだそうですが(かつてよりはだいぶ減った模様)、セーヌ川沿岸はパリ市民たちの憩いの場所も兼ねていたのだとか。
時代時代によって時に忘れられ、画家や作家に再発見されるという歴史。
この川に掛けられた橋の上に当たり前のように建てられていた住居に。
それを競って買い求めた住人たち、それが少しずつ都市機能の発展とともに「川からの清涼な風を塞き止めるよくないもの」として認識されていく様子と、一気に時の権力者によって家々が撤去された時の様子。
それと関連して、パリの都市機能そのものが人体に例えられていく過程、と。


ほとんど全ての題材が、ある程度の時間の流れを持って語られていることが特徴といえば言えるでしょうか、シテ島に作られた身元不明死体を「展覧」する建物(しかし正直、物見遊山で来たはずの住人たちに実際に確認されてちゃ世話ないなw)。
現代になってシテ島以外にも幾つかあった島が一つにまとめられ、沿岸近くの小島が沿岸ともなり、だいぶすっきりしたようなんですが。橋の上の家といい、死体見物といい、ちょっとずつなくなるのが寂しい気はします、いや、それ自体は無理ないんですけどねw