「ラテン・アメリカ史」中屋健一
出版が1964年、ということはキューバ革命を経ての社会主義化が宣言されたことがちょうど同時代で(1961年)、メキシコに買い出しに来た彼らが、様々な日用品雑貨を買い込んでまた戻っていくことを非常に憂慮していたのですが。
(よく考えてみると農民が海越えて気軽に行き来できる辺りでなんか怪しくね?)
まあ、まだまだアメリカの影響も「ソ連邦ほどには」うんざりされていない時代(別の本におけるイギリス人の言ですよ、いつ見ても一筋通った口の悪さだこと)、この後の“反米大陸”の風潮を思い浮かべてその能天気さにちょっと心配になる面がないでもなかったんですが、うん、それ以外にはなんの欠点もなかったので問題ではありません。
というか、ここまで多くの国と要素を扱っておいてここまで読みやすいのは素敵。
出身に関わらず「役に立てば良し」、それ以外の場合は人物の出身を背景とした弊害を語り、純粋なるインディオ(現地住人)が素晴らしい政治をした場合には数割り増しに褒め称える、という方針は、こと中南米に関しては正しいのではないでしょうか。
独裁を否定しない、しかし能力がなければ排斥も当然、というスタンスもわかりやすい。
扱われているのは、まあ思い出せる範囲ですが、メキシコ、ブラジルが印象が深く、アルゼンチン、チリ、ハイティ(ハイチのほうが一般的かと)、ベネズエラにパラグアイに、えーと、ブエノス・アイレス(今は国ではないですね)、コロンビアにコスタリカ。
かつての支配者であるスペインの王族が悪いだけではなく、アメリカやイギリスもただ手助けしてくれるわけでもなく、どんな道があるのか、どうすればいいのかは全て手探り。
それぞれの国は指導者を見出しながらそれぞれの道を探り。
対外的には連帯意識もあるよ、とのことなんですが、まだ安定は少し先かなぁ。