「ガリカニスム−フランスにおける国家と教会」エメ・ジョルジュ,マルティモール

そもそもヨーロッパの国々では「ローマ教皇によって各国の王が任命される」という建て前がありまして(これはどうも、ローマ帝国からのつながりなんですが、これ自体もまたややこしい歴史が)、とはいえ、実際にはそれぞれの国の現実、“俗世の権力”によって王位が決まっている以上、実際にローマ教皇に権力が備わっているわけではなく。
(なので、キリスト教者からの「破門」などが行われるわけですね、非キリスト教者が地獄でどんな目に遭うか、という宣伝もどうもこの一貫の流れのようです。)


まあ、ものすごく大雑把に言うと、イタリアの地にあるローマ教皇領と、隣国である強国フランスの王権との権力争いの本、と言ったところでしょうか。
タイトルの「ガリカニスム」はフランス王権のローマ教皇に対する優越。
それと対抗する理念が「ウルトラ・モダニズム」、ローマ教皇の絶対主義、であって、まあ簡単に言うとこれが実現することは実際問題ありえないわけです(自分で軍隊を抱えて戦争を始める教皇も存在はしましたが、当然ながら、ものすごい反発を全ての国から食らいました、ある意味で、俗権力と無縁であるから力を持つ、という存在なわけですし)。
なんで争うか、というとどうも支配地域が一部被るために税金の問題が生じ、ローマ教皇側は聖職者の任命権を使ってフランス王に脅しを掛け(司教がいないとカソリック圏では生活が成り立ちません)、フランス王はそのお返しに公会議を開き、ローマ教皇に命令を出す、というなんとも傍から見て奇妙な戦いが繰り広げられ。
とはいえ、フランス王が教皇側の問題の解決に尽力したこともあったんですよね、二派に別れた時にも介入してますし、まあなんというか、正直面白い本ではありませんでしたが、キリスト教の一側面として知ってはおくべきなのかなぁ、という気は。