「大航海時代へのイベリア−スペイン植民地主義の形成」飯塚一郎

そもそも正直、私だけに限らす、日本人は多くそうなのではないかと思われるのですが現在のスペインという国はかつて「日の沈まぬ国」という言葉と、大航海時代の牽引役、アメリカ大陸の“発見”の支援者、無敵艦隊と当時は弱小国でしかなかった対イングランド戦での惨敗、そして中南米苛烈なまでの支配と略取、ということを最後にほとんど歴史的存在としての記憶がなくなってしまい。
次に出てくるのが第二次世界大戦より少し遡る時代からの独裁者くらい。
そして、それ以前にしたところで、改めて言われるとその内実がよくわからない「レ・コンキスタ」再征服の時代が長く長くあり、それが終わったかと思うと海に乗り出して、黄金を求め、中南米の地で略奪と強制労働を課したことまでは容易に思い出せるのに、さて一体、その黄金がどのようにスペイン(とポルトガル)に変化をもたらしたのかすらわからない、全く知らないわけではないものの、ひどく途切れ途切れの事態のみで知られ、これをどんな国と表現すべきなのか、正直私にはわからないわけですが。


この地にかつてローマ帝国の末期の頃からゲルマン系(北欧人種)のビシゴート王国、もしくは西ゴート王国という国が存在し、それがイスラム勢力によって攻め滅ぼされ、いくつかのキリスト教系の国がこの地に誕生したところから「レコンキスタ」と呼び。
その国々がそれぞれ権力争いと吸収、合併を経てイスラム勢力の駆逐を行い。
それまで自分たちを支えていてくれていたはずのユダヤ人や、もうとうに混血して人種としては境い目がわからなくなったイスラム人たちまで追い出し始め。
そのために近代が結局この国には訪れなかった、他国にそのチャンスを与え、追い出してしまったのだ、という結論は、断罪というより、著者さんの嘆きに近いんでしょうか。