「パナマ運河−その水に影を映した人びと」山口広次

この本によると要するに、パナマの独立に関してアメリカの後押しを引き出す、と言って無理にねじ込んできたフランス人が(フランス人レセップスの“パナマ運河”計画関係者)、独立後のパナマにて外交的な地位を要求し。
その足でアメリカに直行、パナマ政府の正式なアメリカ合衆国との交渉を出し抜き(露骨に足止めをするようなことまでやってのけたそうです)。
それ以前にパナマ独立前のコロンビア政府との交渉を一日で完全に書き換え。
“アメリカ側に極端に有利”な法案を成立させたあと、恫喝的な態度でパナマを脅しそれを承知させ、その件が済み次第ほとんど姿を消すようにして去り、給料すら「レセップスの記念碑に使って欲しい」と後から通信で寄越した、ということになるようなのですが。


ちょっとまあ正直、この件に関してパナマ側関係者以外の証言を信じる気にはなれないなー、あ、でも、もともと「アメリカがパナマを独立させて運河の権益を独占し」と言われているので、とりあえず現地の意思があった(パナマ政府の証言は信用できると思います)(死ぬほど泣かされてたし、正直)ということにはなるのかな。
そっちのがアメリカがマシ、ということになるのかどうかはやっぱり疑問ですが。
で、パナマ独立に関して拘り過ぎましたがこの本はレセップスの運河計画から(レセップスはエジプトのスエズ運河の建設責任者です)、その頓挫、そしてアメリカが工事再開して完成に至り、その後、様々な時代の変遷を経てパナマがアメリカに対しパナマ運河の権利要求に至ったよ、という現代まで。ちょうどその時期を現地でご覧になったのだとか。
ある意味で外交関係の方らしい本だなぁ、というか、ええまあ、上前半までの記述にいくら疑問があったとしても、著者さんご当人が悪いとは思いませんとも。