「中南米−ラテン・アメリカの政治と経済」山本進

なにぶんにも1960年ちょうどに書かれた本なので、アフリカやアジアの地にヨーロッパの植民地が数多く残り、という時代なのですが(1960年代にアフリカの国々は独立を果たしたわけなのですが)、記述が古びていない、というと褒め言葉でしょうが扱われてるものが現代情勢である以上どうなのかなぁ、というのも本音ですし。
全く逆に、この時点で全てのこの後の情勢が出揃ってるとも言えますし。
もっと言うと、この中のどれも、本当には解決されてないのかもしれません。
農民を長く苦しめた大規模農場のシステムはスペイン植民地下でなし崩しに作られた政策のままだし(これ、スペイン本国はすごく嫌がってはいたんですけどね、植民地側に有力勢力を作られたくない、という意味でも、スペインの“せい”とは言い切れない)。
第二次世界大戦が始まった頃、アメリカの方針に沿って参戦をしたものの。
戦後、アメリカは欧州に重点を移し、むしろ敗者であるドイツや日本まで含めた方向に転換していくという構図に中南米の国々が反発を示し(無理もないよなぁ)、その反動により、ルーズベルト米大統領から「善隣政策」という援助策案が唱えられたものの、わずか一代のうちにその中身は内政干渉の様相を呈した、という一種世界の貧乏くじ。


キューバがそのアメリカ包囲網から飛び出たのがこの出版の一年前の1959年で、翌々年の1962年がキューバ危機、ともなるとまた微妙な時期で。
とりあえず、各国のスペインないしはポルトガルからの独立運動が量的には主となる本ではあったんですが、微妙にその後のほうが記憶に残ったかなぁ、独立運動というのが、結局現地の白人支配者によるもので、その後この地の主体とならなかったんですよね。
結局、どこからやり直せばいいのかわからないし、そんなことは不可能なんだよなぁ。