「物語 古代ギリシア人の歴史」周藤芳幸

大雑把に言うと「物語」よりも解説部分のほうが面白かった、ということでほとんど全てではないかと思うんですが。うんまあ、誠実なお人柄だとは思うんですが、せっかくフィクションと銘打ったならもう少し冒険して欲しかったな、というのが本音というか、歴史に絡めた紀行文辺りに若干の推測、というのが一番向いているのでは、と思うのですが。
(実際の事件を紹介して、これはこうだったのでは? という推測を書くだけでいいような範囲の逸脱しかなかったよねぇ、正直。)


とはいえ、アレクサンダー大王のお抱えのギリシャ人学者の話はなかなか。
その一つ前の夫が妻の愛人を殺した話に関してはこの形式だからこそ面白かったのかな、という気も。この裁判の資料は殺害者である夫の証言しか残っておらず、その対比として全く内容の食い違う妻の証言(フィクション)、そこに当時の風俗や女性の立場などを交えて解説によって推理を展開していく、という内容だったんですが。
やっぱりこれに関しては「妻」の証言欲しいよね。
というか、どの話にしたところで解説まで含めるとちゃんと面白いんですよ、オリンピュアの祭典に優勝した青年の商売はなんだったかな?(ワインかな) とか、とある船の上でただ一人の関係者として疑われた殺人罪の被告が無罪になったけど、ならばもしかして被害者は奴隷商人だったのでは?(あまり大っぴらに出来ない上、恨まれてて当然) だとか、ただ、堅実な内容しか取り扱ってないだけあって起伏に掛けるっつーか。。。
もしかしたら、解説→物語の順に読むと良かったのかなぁ、これ、あ、≪エウフィレトストとその妻≫に関してはそのままがいいと思いますが。
あと≪英霊の父となったアテネ市民≫は像に関した揉め事のほうが読みたかった気が。