「コンゴ紀行(正」アンドレ・ジイド

さて一体、この非人道的な“支配”がまかり通っていたのがいつ頃のことなのか、という細かい年代をうんぬんしてもあまりピンとは来ないような気もしますが、1951年に82歳の生涯(念のため、第二次世界大戦終結が1945年)を閉じた方ともなると現代で。
その彼がかなり「いい歳」になってからのことだとなるともう過去とも言い切れない。


アフリカの地がヨーロッパ列強(とも限らない、小さな国は小さな地域をがっつりと掴んでいるようですよ)の支配によって引き裂かれていた頃、観光客などほとんど、というよりほぼ存在しない中をゆっくりと北上していくのはフランスの作家さんで。
ちょうど、この旅行のさなかに「作品が古臭い」という評を貰ってしまって嘆いてらしたとは到底思えないアクティブさだなぁ、というのが実感でしょうか、この頃はそもそも植民地が悪だ、という考え方に乏しく(でも逆に、美化や正当化に懸命なら、すでにそんな芽生えはあったんでしょうか)(イギリス人が現地人に金を払うのが許せない! と植民地人が怒っていた辺りとか、正直ちょっと感覚が掴みにくかったです)、この翻訳自体も古い版で読んだためなのか表記は“土人”となっていて、現代人にとってはその辺違和感があるんじゃないかなぁ、とは思えるのですが。
けど、これはこのままでもいいんじゃないかな、というのが個人的な実感。
どんな表記でどんな環境にいる人でも、内容が真っ当ってのはほとんどすぐわかるというか、この人はアフリカの地でも土地の悪行を訴えに駆け込んでくる、ということが繰り返されたのですが、なんとなくわかるような気もします、なにかが違う。
景色の美しさや、人々の皮膚病の有無だとか(酷いことするなぁ;)、その土地土地の植民人の喋る内容を淡々と書いてるだけなんですけどね、なんか誠実だよなぁ。