「国境なき医師が行く」久留宮隆

国境なき医師団”というのはいつだっけ? わりと近年有名になったNPOの一種で本部がフランスに、という程度の知識しかないのだけれども、まあ、日本人にありがちなことに私もまあまあ美化して考えていて、実際にそれに飛び込んだ人に言わせると「なにもかもあまりにも足りなさすぎる!」ということになるのだろうけれども。
それはこう、正直理想を抱えて飛び込んだ人たちのせいでもないし。
どれだけ足りなかろうがなんだろうが、現地の人たちの敬意が薄れたりするようなこともないんだろうな、と逆になんとなく思わないでもなく。
NPOだから限界があるよ、というのはある意味で当たり前で。
これで幻滅したらむしろ自分が恥ずかしいのではないかなぁ、とも思わないでもなく。


この本ではもちろん英語くらいは使えるけれども、アフリカで現地の人を相手にするような語学力など全くない人物がリベリアの地になんの準備もなく配属され、約束されていた引継ぎ期間をこなすこともなく前任者が逃げるように去ってしまい。
正直、産婦人科の経験なぞ皆無だよ! という状態で実地治療に挑み。
翻訳をなし崩しに任せることになってしまった麻酔医には文句を言われ、というような波乱万丈の状態になるのですが、ある意味で当人はそう書いておられないけれど、辛抱強く人の立場を考えて働く彼の存在はいい意味ですごく日本人的だったのではないかなぁ、というようなことを思えないでもなく。
あとで出てきたシモーヌ嬢(実にアメリカ人らしかったw)とともに、この地のスタッフに刺激を与えたんじゃないなぁ、となんとなく勝手に思っているのですが。
半端で非力だからって反省することないよね、やっぱり、いい話だったな。