「シャーロック・ホームズの生れた家」ロナルド・ピアソール

シャーロック・ホームズというと探偵小説の黎明期(とはいえ、別に始めてってわけでもないし、それなりにブームに乗って現れたんだよね)、ヴィクトリア朝の末期から第一次世界大戦を経て、という英国の非常に微妙な時期を生きた作者によって生み出された、多分世界で一番有名な探偵さん、一番有名な創作上の人物、は言いすぎかな?
(英国にはホームズを実在の人物と思ってる人が多いという調査がかつてw)


でも、詳細に分析されてみると一体なぜ、この作品だけがそれほど突出したかがわからない、ヴィクトリア後期の退廃と、それまで社会的に有効だった地位の上下が揺らぎ始め、けれどそうそう簡単によじ登れるわけでもない、という社会の中。
どことなく高貴な雰囲気を漂わせて、しかし取っ付きやすい、そして絶対的な正義の側の人間だったホームズが好まれた、というのはわかりやすい話ではあったのですが。
ただ、自分がホームズのことをそう感じたかというとそんなことはない。
どっちかというと癖とアクの強い、上手く社会に溶け込めそうもない人物のような気がしていたし(でも実際、彼はかなりの地位と名誉持ってるんですよね)。
けれど結構好きかと言われたら、まあ好きだよな、とも思うんですよね。
シャーロック・ホームズの「住所」には今も世界中から手紙が届くとたびたび聞くし、当時から作者のところに事件を持ち込むことも、実際に彼が擁護したこともある。
けれどまあ、コナン・ドイル氏は別に完璧ではないし、心霊関係へののめり込みや戦争擁護で政府の宣伝に利用されたり、スポーツ万能なところなどだいぶイメージが違う。
ホームズだけが鮮やかに今も生きているってなんというか、不思議としか言い様がないですよね、面白かった。