「明治鉄道物語」原田勝正

そもそも日本に鉄道というものがもたらされたのは欧米よりもだいぶ遅れて、というのは特に歴史に興味がなくてもなんとなく知っている方が多いのではないかと思うのですが(要するに明治になるまで全く欧米の産業技術は入って来なかったわけだし)(文化はオランダ経由でちまっと入ってます、科学や医術も少しだけ)、それが日本人がほとんど始めて蒸気機関車を目にしてほんの数年後だったとか、初めて見た人たちがすでに数回の移動を繰り返す間に記録していった、ということなんかは案外知らない気がするし。
日本に鉄道以前に「轍道」があったんだよね、というのも知らなかったです、正直。
これの読みがてつどう、要するに馬車などが凹んだ土地を通ることで効率を上げるという考え方だったらしく、日本純正だとここ止まりだったと、なので凸のレールを導入するに当たってはほぼ全て欧米の技術に頼らなくてはならなかったらしいこと。
海外からの雇われ技術者の中で一人だけやたらと評価されていると思っていたモレル氏が、そもそも日本に技術者を育成しましょうとか、日本に風土にあった材料を使用すべきで国内で用意できるものは用意し、言いなりに買わされてちゃ駄目ですよ、と助言してくれていたらしいこと(それは他と扱いが全然違うのも頷けますとも!)。
少しずつ日本人単独で路線を作り上げていく過程、国で路線を建設したかったのだけれども、金がなくなり、民間の元・貴族集団の出資する“日本鉄道”に協力を仰いだこと。
などなど、わりと知ってることとそうでないことが入り混じり。


後半になるとそろそろ萌芽の出始めた軍事傾倒の話、ただ、どちらかというと政治家が軍事の裏付けを得て主張を語るという程度でもあったのかなぁ、という気も。
軍事にしろ政治にしろ、なにか身勝手なものにも影響されやすいのかなぁ、鉄道は。