「鉄道ゲージが変えた現代史-列車は国家権力を乗せて走る」井上勇一

まずロシアが大陸に“シベリア鉄道”を作り、それが日本の危機感を煽り、日清戦争日露戦争第一次世界大戦などを途中に挟んで時にイギリスとタッグを組み(のちにアメリカが参入してきて距離感が曖昧に)、ロシアの4フィートの広軌と、現在の日本の新幹線などの規格、世界的な標準軌との対決が朝鮮半島ならびに中国の「満州」付近で繰り広げられていたよという趣旨の本なのですが。

対決って言ってもどっちの路線を敷くかってことがメインですね。

正直、途中までは日本の方針を応援していたのですが、権益に関われるかどうか自分の手で建築が行えるかどうかを拘るようになりすぎて、誰が作っても標準軌でさえあればいざって時乗っ取ればいいだけじゃない?! と結論になってしまったんですが、私は平和主義です戦争とか経済的に無駄だから嫌いです。ていうかイギリスが多分それに近い方針だよな。

 

なんで上のような路線の取り合いが起こるのかというと、当時国家間の戦争を遂行するのに兵士輸送に鉄道もしくは船がないと不可能だったという事情があり(言われると納得)。

実はロシアからは日本への進軍は鉄道がない限りちょっと戦争とか無理だったというなかなか愉快な事情があります、冬になったら不凍港が存在しないので兵力出せませんなんて状況で確かに戦争は無理だよね、うんよくわかる。

もともと日中戦争前史辺りの時代をメインに扱ってて日清・日露のややこしさに匙を投げた身としてはこの本の内容はもっと知られるべきだなぁ、とは思うものの、概念自体は優しいけどもうちょっとわかりやすくないとなかなか難しいという気はします。

あと、満州ならびに張作霖とその息子の張学良になるとまた事情が変わってくるよね、これは経済事情なんかを踏まえて考えたほうがいいと思うんですが、どうかな?