「日本初の私鉄「日本鉄道」の野望-東北線誕生物語」交通新聞社新書025、中村建治

日本初の私鉄「日本鉄道」の野望―東北線誕生物語 (交通新聞社新書)

日本初の私鉄「日本鉄道」の野望―東北線誕生物語 (交通新聞社新書)

個人的にはほぼ前後して作られているもう一つの“日本初の私鉄”である東京馬車鉄道が果たして新橋と上野間をつないだのかな、という部分に少しでもいいから触れて欲しかったなという(計画が示唆まではされてたのでw)希望がないでもなかったのですが、まあ逆に言えば不満はそのくらいで概ね創業の時点から東北線完成までをきっちり、国家買収のところまでざっと語っていて結構満足した1冊でした。

正直この著者さんの本は若干読みにくいなと思いながら(あと初期は情報媒体がわからない書き方なこともありましたね)題材が珍しいので結構追いかけていたんですが、ここまで読んできて良かったなぁ、というのが実感ですね。いきなり読むのは無理でしょうが、まあまあ交通新聞社新書だから大丈夫なんじゃないかな。

(そして多分「日本鉄道」がなにかを知ってる人も今はある程度限られてるよね。)

もともとこの日本鉄道株式会社を政府が望んだのか華族側が望んだのか、本によって違っていたのですが、恩給がそもそも政府にとって負担で、また華族側もその使い道に世間体もあって苦慮していて、将来の担保の形で支給された、という説明に実にすっきりしました、全員ろくでもなかったw

 

工事が国任せだったのは前から聞いていたんですが、上野が始点になるまでも結構面白い変遷があったんですね、品川線(山手線の一部、赤羽-品川間)って作られた動機がよくわからなかったんですがむしろ井上勝氏(日本の鉄道のおとんって言われてる人)が強く望んだものだったんですね、これは今まで政治で説明されていたのを見ていたんですが、個人の意思で説明するのが妥当だったんじゃないのかなぁ。これもわかりやすかったです。

鉄道敷設地決定の「全体賛成、各論反対」には笑いましたが、日本人らしいw