「ホロー荘の殺人」エルキュール・ポアロ22、アガサ・クリスティ

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

犯人が誰かということも、その動機がなにかということもあまり重要でもなく、まあ、直接ポアロさんと対峙することになった“ヘンリエッタが何故”ということすら当人の口から聞かないと読者にはわからないので。改めてこれがなんの話であったのか、ということを考えると、うーん、アンカテル家という特殊な一族のことなのかもしれないし。

ガータという哀れな女性や、女優さんやら、まあ個性の強い人はいるんだけど、なんかこう、微妙に埋もれるんだよなぁ。ヘンリエッタ以外。

 

でも彼女にしたところで埋もれない、記憶には残ったという程度だしね。

なにが話を支配していたのか、となるとこの世界がいかにままならないものであるのかというか、うーん、エドワード(良かったね!)や影の薄かったデイヴィッドですら含めて一つの背景を成しているというだけに過ぎないというか。

 

変わった病気の研究をしていたのだという、医者であった被害者だけが生身の人間で、あとは死人である彼よりももっと死んでいるのだという表現が作中で出てくるわけですが。優れた人たちでもあるわけなんですよ、金にも困ってないし、教育もあるし、そしてそれぞれ人好きがする部分もあり。

少なくとも邪悪ってことはない(内に篭もった青年もね)。

たまたま悲劇が起こり人が死んだのだけれども、それすらもしょうがない流れであったのだという話ですらあるのかもしれません。なんだろうなぁ、この人たちを縛っているものって、人間誰しも、少しは持っているものでもあるような気もするのですが。

しかし本当になんの話だったんだろうなぁ、この本。本当に不思議。