「象は忘れない」エルキュール・ポアロ32、アガサ・クリスティ
- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,中村能三
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
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なんとなくなんですがオリヴァ女史ってクリスティさんの分身みたいなものなのかなぁ、ということを考えているのですが、なんというのかな?
聡明でちょっとお節介だけれども善良で良い分身がポアロさん(彼も女性的な側面多いと思うんだよね)、理論的なようでそうでもなくて、話がとっ散らかっていて人と関わりが多い割に覚えていられない、負の側面の分身が推理作家のオリヴァさん。
あくまで仮定なんですけどね、旦那さんや仲の良い男性作家から見た、第三者の目を通したある意味でクリスティさんの一面じゃないかって感じることがあるんですよね。
ただ、悪いほうのクリスティさんもやっぱりいい人だよね、筋は通らなくても情熱的で。
彼女がかつて接したたくさんの名付け子、記憶にも薄らとしか残らない「シリヤ」の恋人の義理の母親から、ある日、彼女の両親はなぜ、どちらがどちらを殺したと思いますかと唐突に話し掛けられたところから話は始まって、それが15年も昔のこともあって、曖昧模糊とした記憶しか皆残していない、皆勝手な憶測で記憶をつないでいるんですよね。
夫婦がある日、なんのわだかまりもなかったはずなのに死んでいたことしかわからない。
少しずつ会話を重ねて行くうちに双子の姉が浮かび上がり、その彼女が精神障害を患っていたらしくて、その夫婦の死の数週間前に死んでいた、ということが判明し。
そして彼女ら姉妹がそっくりだったこと、かつて妹の夫は、姉と恋人同士であったことがわかって、ああ、そういうことなのかもしれない、という仮説は立てられるんですが。
わりとそれ自体は大したことでもない、この姉は仕方ないというか、どうでもいいんだと思うんだよね、そうじゃなくて、優しい夫婦がどうして、なにを考えていたのか、最後はそういうことを考えていたと思うんだ、そしてやっぱり、真実がわかって良かったと思う。